佐世保市の世帯構造の変化:核家族化と多様化する家族のかたち
はじめに
日本の家族のかたちは、この数十年で大きく変化してきました。かつては祖父母、父母、子どもが一緒に暮らす三世代同居が一般的でしたが、現代では核家族や単身世帯が増加しています。佐世保市も例外ではなく、世帯構造の変化は地域社会のあり方に大きな影響を与えています。本記事では、佐世保市統計書のデータをもとに、世帯構造の変化とその影響について詳しく分析します。
(令和2年)
(わずか744世帯)
女性親の割合
核家族化の進行
令和2年の佐世保市の一般世帯数は103,624世帯で、そのうち核家族世帯は57,644世帯と、全体の55.6%を占めています。核家族とは、「夫婦のみ」「夫婦と子ども」「ひとり親と子ども」の世帯を指します。
核家族世帯の内訳を見ると、「夫婦のみ」の世帯が22,723世帯(核家族の39.4%)、「夫婦と子ども」の世帯が23,417世帯(同40.6%)となっており、両者がほぼ同数です。これは、子育てを終えた夫婦のみの世帯と、現役の子育て世帯がほぼ同じ割合で存在していることを示しています。
一方、「ひとり親と子ども」の世帯は11,504世帯(同20.0%)で、核家族の約5分の1を占めています。これは、離婚や死別などによりひとり親で子育てをしている世帯が相当数存在することを示しています。
三世代同居の激減
かつて日本の家族の典型とされた三世代同居(夫婦、子ども、親が同居)は、佐世保市ではわずか744世帯と、全世帯の0.7%にまで減少しています。これは、100世帯に1世帯もないという極めて低い水準です。
三世代同居の減少は、以下のような社会的背景があります:
- 住宅事情の変化:マンションやアパートなどの集合住宅が増え、大家族で住める広い家が減少しました。
- ライフスタイルの変化:若い世代は独立した生活を好む傾向が強まり、親世代も子ども夫婦との同居を必ずしも望まないケースが増えています。
- 就業地の分散:若い世代が就職や転勤で地元を離れることが多く、親と同居する機会が減少しています。
- 価値観の多様化:家族のあり方に対する価値観が多様化し、三世代同居が「当然」ではなくなりました。
三世代同居の減少は、家族の絆の希薄化や、高齢者の孤立、子育て支援機能の低下といった課題をもたらしています。かつては祖父母が孫の世話をするなど、家族内で助け合う仕組みがありましたが、核家族化により、そうした機能が失われつつあります。
ひとり親世帯の実態
佐世保市のひとり親世帯のデータを見ると、令和2年時点で「女親と子ども」の世帯は10,206世帯、「男親と子ども」の世帯は1,298世帯となっています。つまり、ひとり親世帯の約89%が女性親(母親)であるということです。
女性親が圧倒的に多い背景には、離婚の際に親権が母親に渡されるケースが多いこと、配偶者との死別でも女性が残されるケースが多いことなどがあります。
- 経済的困難:女性の平均賃金は男性より低く、ひとり親世帯の貧困率は高い傾向にあります。
- 時間的制約:仕事と子育ての両立が困難で、時間的な余裕がありません。
- 孤立:相談相手や支援者が身近にいないケースが多く、孤立しやすい状況にあります。
- 子どもへの影響:経済的困難や時間不足により、子どもの教育や成長に影響が出る可能性があります。
人口減少でも世帯数は微減
興味深いことに、佐世保市では人口が大きく減少している一方で、世帯数は微減にとどまっているか、ほぼ横ばいとなっています。これは、1世帯あたりの人数が減少し続けていることを意味します。
1世帯あたりの人数が減少する要因は:
- 単身世帯の増加:高齢者の一人暮らしや、若者の単身生活が増加しています。
- 核家族化:三世代同居から核家族へと移行することで、世帯あたりの人数が減少します。
- 少子化:子どもの数が減ることで、家族の人数が減少します。
- 晩婚化・非婚化:結婚しない、または結婚年齢が遅くなることで、単身世帯の期間が長くなります。
世帯数が減らないということは、住宅需要はある程度維持されますが、世帯あたりの消費額は減少する可能性があります。また、小規模な世帯が増えることで、地域のコミュニティ形成や防災、見守りなどの面で新たな課題が生じています。
世帯構造の変化がもたらす影響
世帯構造の変化は、地域社会に様々な影響をもたらしています:
- 子育て支援の必要性:核家族化により、祖父母の支援を得られない子育て世帯が増加しています。保育サービスや子育て支援センターなど、社会的な支援体制の充実が求められています。
- 高齢者の孤立防止:単身高齢者世帯の増加により、孤独死や詐欺被害などのリスクが高まっています。地域での見守り体制や、高齢者が集える場所の提供が必要です。
- 地域コミュニティの再構築:かつては家族や親族がコミュニティの中心でしたが、核家族化により、地域での新たなつながりの形成が求められています。
- 多様な世帯に対応した住宅政策:単身世帯、核家族、ひとり親世帯など、多様な世帯形態に対応した住宅供給が必要です。
- ひとり親世帯への支援:経済的支援、就労支援、子育て支援など、ひとり親が安心して子育てできる環境の整備が急務です。
新しい家族・地域のかたちへ
世帯構造の変化は、単に「昔はよかった」と嘆くべきものではありません。核家族化や世帯の多様化は、個人の自由や選択肢の拡大という側面もあります。重要なのは、新しい家族のかたちに対応した社会システムを構築することです。
今後求められるのは:
- 「選べる」家族のかたち:三世代同居を希望する人には同居しやすい環境を、核家族を選ぶ人には適切な支援を、というように、多様な選択肢を尊重する社会づくりが必要です。
- 「地域家族」という発想:血縁に頼らず、地域全体で支え合う仕組みを作ることで、核家族や単身世帯の孤立を防ぎます。
- 柔軟な働き方:仕事と家庭の両立がしやすい環境を整備することで、ひとり親や共働き世帯の負担を軽減します。
- ICT技術の活用:遠隔地に住む家族とのコミュニケーション支援や、オンラインでの子育て相談など、技術を活用した新しい支援のかたちを模索します。
まとめ
佐世保市の世帯構造は、核家族率55.6%、三世代同居わずか0.7%という、大きな変化を遂げています。ひとり親世帯の89%が女性親であることも、支援の必要性を示しています。
世帯構造の変化は、子育て支援、高齢者の孤立防止、地域コミュニティの再構築など、様々な課題をもたらしています。しかし同時に、個人の自由や選択肢の拡大という側面もあります。重要なのは、多様な家族のかたちを尊重しつつ、誰もが安心して暮らせる社会システムを構築することです。
「昔ながらの家族」に戻ることは現実的ではありません。むしろ、新しい家族のかたち、新しい地域のかたちを、データに基づいて模索していくことが、これからの佐世保市に求められています。
データ出典:佐世保市企画部政策経営課