佐世保市の人口流出と若者減少:18歳の壁
はじめに
地方都市にとって、若者の流出は深刻な問題です。佐世保市でも、高校卒業後の進学・就職を機に多くの若者が市外へ流出しています。その数は年間1,000人を超え、地域の活力低下や労働力不足の原因となっています。本記事では、佐世保市統計書のデータをもとに、誰が、どこへ、なぜ流出しているのか、そして流出を食い止めるためには何が必要なのかを詳しく分析します。
(社会減)
(15-19歳と20-24歳の人口差)
(最大の流出先)
社会減の実態:年間1,725人が流出
令和6年の佐世保市の転入・転出データを見ると、県内他市への転出超過が約519人、県外への転出超過が約1,206人で、合計約1,725人の社会減(転出超過)となっています。これに自然減(出生数-死亡数)の2,101人を加えると、年間で約3,826人もの人口が減少していることになります。
社会減の内訳を見ると:
- 県内間:転入2,579人、転出3,098人で、519人の転出超過
- 県外間:転入4,782人、転出5,988人で、1,206人の転出超過
県内・県外ともに転出超過となっており、佐世保市は「人を引き留められない街」になっているのが現状です。
18歳の壁:年齢別人口から見える若者減少
年齢別人口のデータから、極めて興味深いパターンが見えてきます。15-19歳の人口は11,082人ですが、次の年齢層である20-24歳になると9,957人に減少し、実に1,125人(10.2%)の差があります。この大きな差は、高校卒業後の進学・就職を機に多くの若者が市外へ流出していることを示唆しています。
年代別人口(令和6年10月時点)
18歳、19歳の人口を見ると、18歳が2,223人、19歳が2,165人と、この年代だけで4,000人以上が存在します。実際の転入・転出データでは、県内外合わせて年間約1,725人の転出超過があり、その多くが若年層と考えられます。
転出先はどこか:福岡が圧倒的
若者たちはどこへ流出しているのでしょうか。データを見ると、転出先は明確です。
県外の転出先
県外への転出先では、福岡県が圧倒的で、令和6年には1,705人が佐世保市から福岡県へ転出しています。一方、福岡県から佐世保市への転入は1,067人で、差し引き638人の転出超過となっています。
福岡県への流出が多い理由は:
- 地理的に近く、高速バスで約2時間とアクセスが良い
- 九州大学をはじめとする有名大学が多い
- 企業の数が多く、就職先の選択肢が豊富
- 商業施設やエンターテイメントが充実している
その他の主な転出先は:
- 東京都:480人(首都圏への憧れ、高学歴者や専門職の流出)
- 神奈川県:437人
- 大阪府:232人
県内の転出先
県内での転出先を見ると、長崎市への転出が最も多く783人、次いで大村市への転出が700人となっています。
特に注目すべきは大村市で、令和5年の501人から令和6年には700人へと、199人も増加しています。これは長崎空港の存在や、交通の便の良さ、新しい商業施設の開発などが影響していると考えられます。佐世保市から大村市へは年間700人が転出し、大村市から佐世保市へは272人が転入しているため、差し引き428人の転出超過となっています。
長崎市との間は比較的均衡しており、転入646人、転出783人で、転出超過は137人にとどまっています。県内二大都市間では、ある程度の人口移動の均衡が保たれていると言えます。
人口回復の可能性:Uターン・移住促進の重要性
年間1,725人の転出超過という厳しい現実がありますが、この流れを変えるための施策は存在します。
年齢別人口を見ると、30-34歳の人口(9,516人)が25-29歳(8,899人)より617人多いという興味深いデータがあります。この差が何を意味するかは、転入・転出の年齢別データがないため断定できませんが、30代で佐世保に戻ってくる人が一定数存在する可能性を示唆しています。
- 子育て支援の充実(保育園の待機児童ゼロ、子育て世帯への住宅補助など)
- 親との同居・近居支援(二世帯住宅の建設補助など)
- リモートワークの推進(都市圏の仕事を佐世保でできる環境整備)
- Uターン者向けの就職支援(地元企業とのマッチング、転職支援など)
- 移住希望者への情報提供と受け入れ体制の整備
実際の転入・転出データを見ると、県外からの転入が4,782人、県内からの転入が2,579人と、合計7,361人が佐世保市に転入しています。転出者数には及びませんが、一定数の転入者がいることは事実です。この転入者を増やし、転出者を減らす取り組みが重要です。
地元定着のための施策
若者の流出を防ぎ、地元定着を促進するには、「出て行かせない」よりも「出て行っても戻ってきたくなる街」を目指すべきです。18歳での流出は、進学や就職の機会を求める若者にとって自然な選択であり、無理に引き留めることは現実的ではありません。
重要なのは以下の3つの戦略です:
- 戦略1:魅力的な雇用機会の創出
- 企業誘致による新しい産業の創出
- 地元企業の成長支援
- スタートアップ支援
- 若者が希望する職種(IT、クリエイティブ、専門職など)の拡充
- 戦略2:高等教育機関の充実
- 大学や専門学校の誘致・拡充
- 地元高校生が「佐世保で学びたい」と思える教育環境の整備
- 産学連携による実践的な教育の提供
- 戦略3:「戻ってきたくなる」魅力の創出
- 子育て環境の充実
- 文化・スポーツ・エンターテイメントの充実
- 自然環境と都市機能のバランス
- 地域への愛着やつながりを育む教育
まとめ
佐世保市では年間約1,725人が転出超過しており、人口減少が続いています。年齢別人口データを見ると、15-19歳と20-24歳の間には1,125人の差があり、高校卒業後の進学・就職を機に多くの若者が流出していることが推測されます。転出先は福岡県が最多で年間638人の転出超過、県内では大村市への流出が428人と目立ちます。
一方で、年間7,361人が佐世保市に転入しているという事実もあります。転出者数(9,086人)には及びませんが、一定数の転入者が存在します。この転入を増やし、転出を減らすことが人口減少を食い止める鍵となります。
重要なのは、若者が外の世界を経験した後、「佐世保に住みたい」と思える街づくりです。子育て支援、魅力的な雇用機会、充実した教育環境、文化的な豊かさ——これらを整備することで、Uターン者や移住者にとって魅力的な街を目指すべきです。
データ出典:佐世保市企画部政策経営課