コロナ禍を支えた615億円!佐世保の中小企業融資の実態
新型コロナウイルス感染症が地域経済を直撃した令和2年度。佐世保市の信用保証協会が扱った融資保証額は615億円に達し、前年度の214億円から実に187%増という驚異的な伸びを記録しました。この数字の裏には、必死に事業を守ろうとした中小企業と、それを支えた金融支援の姿がありました。
令和2年度、保証申込が前年の3倍近くに急増
長崎県信用保証協会の佐世保支所管内(佐世保市、平戸市、松浦市など10市町)での保証申込件数は、令和元年度の1,439件から令和2年度には4,137件へと約3倍に急増しました。
特に注目すべきは保証申込額です。令和元年度は214億円でしたが、令和2年度には615億円へと401億円も増加。これは通常年の約3倍に相当する規模で、いかに多くの事業者が資金繰りに苦しんでいたかがわかります。
令和2年度に急増した融資の多くは、政府の緊急経済対策による「セーフティネット保証」や「危機関連保証」でした。これらは通常の保証枠とは別枠で利用でき、さらに保証料も減免されるなど、事業者にとって大きな支援となりました。
保証債務残高は684億円でピーク
保証承諾された融資は実際に実行され、保証債務残高(保証協会が保証している融資の残高)は令和2年度末に684億円に達しました。前年度の451億円から233億円、51.7%の増加です。
その後、令和3年度には672億円、令和4年度には658億円と徐々に減少していますが、それでもコロナ前の水準を大きく上回る状態が続いています。
代位弁済も増加傾向、厳しい経営環境続く
一方で、気になるデータもあります。代位弁済(借り手が返済できなくなり、保証協会が代わりに返済すること)の件数と金額が、令和5年度に増加に転じました。
令和5年度の代位弁済は60件・5.7億円で、前年度の40件・2.3億円から大きく増加しています。コロナ禍で受けた融資の返済が始まる中、なお厳しい経営環境に直面している事業者が少なくないことがうかがえます。
コロナ融資の多くは元金返済の据置期間が設けられていましたが、その期限が次々と到来しています。令和6年以降は本格的な返済期に入るため、事業の立て直しが間に合わない企業の倒産や廃業が増える可能性があります。
地域金融支援の重要性
令和5年度の新規保証申込は1,527件・194億円と、コロナ前の水準に戻りつつあります。しかし、保証債務残高は依然として614億円と高水準を維持しており、地域経済の回復にはまだ時間がかかることを示しています。
佐世保の中小企業が今後も事業を継続し、地域雇用を守っていくためには、金融機関による伴走支援や、行政の継続的な支援策が欠かせません。コロナ禍で明らかになった信用保証制度の重要性を、今後の地域経済政策に活かしていくことが求められます。
数字が語る地域の絆
615億円という数字は単なる金額ではありません。それは、困難な状況でも事業を続けようとした経営者の決意であり、地域の雇用を守ろうとする取り組みの証です。そして、その挑戦を金融面から支えた信用保証協会と金融機関の役割の大きさを物語っています。
ポストコロナの時代を迎えた今、この経験を踏まえて、より強靭な地域経済の構築が期待されます。
データ出典:令和6年版佐世保市統計書(第35回)「08_金融」
資料:長崎県信用保証協会
対象地域:佐世保市、平戸市、松浦市、西海市、佐々町、川棚町、東彼杵町、波佐見町、新上五島町、小値賀町