統計
公開: 2025年11月10日 テスト管理者 33 views 更新: 2025年11月23日

預金総額1兆2800億円突破!でも地域金融機関は苦戦中

この記事をシェア:

統計

預金総額1兆2800億円突破!でも地域金融機関は苦戦中

佐世保市内の金融機関全体の預金残高は、令和5年に1兆2,816億円に達し、過去最高を更新しました。令和元年の1兆1,705億円から5年間で1,111億円、9.5%も増加しています。一見すると好調に見えますが、データを詳しく見ると、その内実は大きく異なります。銀行が大幅に預金を伸ばす一方で、地域密着型の金融機関は苦戦を強いられているのです。

銀行だけが一人勝ち

5年間の預金増加額1,111億円のうち、実に1,230億円が銀行の増加分です。これは増加額の「全て以上」を銀行が独占し、他の金融機関は合計で120億円も減少していることを意味します。

  • 銀行:9,011億円 → 10,240億円(+1,230億円、+13.7%)
  • 信用金庫・信用組合:1,388億円 → 1,297億円(-91億円、-6.6%)
  • 農協・漁協:1,306億円 → 1,279億円(-27億円、-2.1%)
市場シェアの変化が物語るもの
令和元年時点では、銀行のシェアは77.0%でしたが、令和5年には79.9%まで上昇しました。一方、信金・信組は11.9%から10.1%へ、農協・漁協は11.2%から10.0%へと低下。地域金融機関の存在感が薄れつつあることがデータからはっきりと読み取れます。

なぜ地域金融機関は預金を減らしているのか

地域金融機関の預金減少には、いくつかの要因が考えられます。

1. 店舗・ATMネットワークの差
大手銀行は市内に多くの店舗やATMを持ち、利便性で優位に立っています。さらにオンラインバンキングも充実しており、若い世代を中心に支持を集めています。

2. 低金利時代の商品力
低金利が続く中、預金金利ではほとんど差がつきません。むしろ、ポイント還元や投資信託、保険商品などの品揃えで大手銀行が優位です。

3. 高齢化と世代交代
地域金融機関を長年利用してきた高齢者が減り、若い世代は利便性を重視して大手銀行を選ぶ傾向があります。

貸出も二極化が進む

預金だけでなく、貸出金も同様の傾向が見られます。銀行の貸出金は5年間で407億円増加した一方、信金・信組は横ばい、農協・漁協は微減という状況です。

  • 銀行:4,843億円 → 5,250億円(+407億円、+8.4%)
  • 信用金庫・信用組合:1,093億円 → 1,100億円(+7億円、+0.6%)
  • 農協・漁協:361億円 → 357億円(-4億円、-1.0%)

地域金融機関の存在意義は?

こうした厳しい状況の中でも、地域金融機関の役割は決して小さくありません。前述の記事でも紹介したように、信金・信組の預貸率は84.8%と銀行の51.3%を大きく上回り、集めた預金の大部分を地域への融資に回しています。

また、地域の中小企業や個人事業主にとって、長年の付き合いがある地域金融機関は、単なる金融取引以上の相談相手として重要な存在です。

生き残りをかけた戦略
地域金融機関は今、変革の時を迎えています。デジタル化への対応、他行との連携、コンサルティング機能の強化など、規模では勝てない大手銀行に対して、独自の価値を提供する取り組みが求められています。

私たちにできること

地域金融機関の苦戦は、単に一企業の問題ではありません。地域に根ざした金融機関が弱体化すれば、地域経済への資金循環が滞り、中小企業の資金調達が困難になる可能性があります。

私たち市民一人ひとりが、預金先や融資先を選ぶ際に「地域経済への貢献」という視点を持つことも、地域金融を支える一つの方法です。佐世保の金融データは、地域経済のあり方を考える重要な問いを投げかけています。

データ出典:令和6年版佐世保市統計書(第35回)「08_金融」
資料:日本銀行長崎支店「金融経済概況」

みんなシステムズ編集部

野田祐機

長崎県佐世保市出身。佐世保にUターンして、これまで気づかなかった良さを再発見。 BASF, モルガン・スタンレーに勤務ののち、地域の情報配信サイトを運営。youtubeにて情報を発信。元ブロガー。Huffintonpostなどにも寄稿

関連記事

目次
カテゴリー一覧
お問い合わせ

ご質問やご相談など
お気軽にお問い合わせください

お問い合わせ