年間100万トンの貨物が語る:佐世保港が支える「見えない産業構造」
観光や海上自衛隊の基地として知られる佐世保港。しかし、この港には一般市民が気づきにくい、もう一つの重要な役割があります。それは「物流の拠点」としての顔です。令和6年版佐世保市統計書のデータを分析すると、年間約100万トンもの貨物が佐世保港に移入されており、そこから見えてくる佐世保の産業構造には驚くべき実態がありました。
石油製品が支える42%のシェア
令和5年、佐世保港に移入された貨物は約98.8万トン。その内訳を見ると、最も多いのが石油製品です。揮発油(ガソリン)が約15.6万トン、その他石油(軽油、灯油など)が約26.4万トン、合計で約42.0万トン。これは全体の実に42.5%を占めます。
年間42万トンの石油製品が港から市内に供給されていることは、佐世保が「エネルギー消費都市」であることを示しています。約23万人の人口を抱える都市と周辺地域の自動車、暖房、産業活動を支えるため、日々大量の燃料が港から供給されているのです。この「見えないインフラ」がなければ、私たちの生活は成り立ちません。
建設需要を映す砂利・砂とセメント
石油製品に次いで多いのが、砂利・砂(約24.7万トン、全体の25.0%)とセメント(約4.9万トン、同4.9%)です。合わせて約29.6万トン、全体の約30%を占めるこれらの建設資材は、佐世保の建設需要の高さを物語っています。
令和5年の砂利・砂の移入量は、令和4年(約23.5万トン)から約1.2万トン増加しており、市内のインフラ整備や住宅建設が活発に行われていることがうかがえます。また、セメントも令和4年の約5.3万トンから微減したものの、安定した需要を維持しています。
農業・水産業を支える物流
見過ごせないのが、動植物性製造飼肥料の約5.4万トン(全体の5.5%)です。この数字は、佐世保の農業、特に畜産業を支える重要な物流を示しています。牛・豚・鶏の飼育には大量の飼料が必要であり、それが港から供給されています。
また、水産品も約3.3万トンが移入されており(全体の3.4%)、佐世保が水産業の拠点であることを裏付けています。佐世保港で水揚げされた魚が市場に出るだけでなく、加工用の水産品も港を経由して市内に入ってきているのです。
飼肥料と水産品を合わせると約8.7万トン。これは全体の約9%に相当します。一見すると小さな数字に見えますが、この物流がなければ佐世保の農業・水産業は成り立ちません。港湾物流は、第一次産業を「裏側から支える」重要な役割を担っているのです。
麦と穀物:食を支える基礎物資
令和5年には麦が約1.8万トン、とうもろこしが約1,511トン、その他雑穀が約2,888トン移入されました。これらは製粉業や飼料製造に使われ、パンやうどん、家畜の飼料となって市民の食卓を支えています。
5年間のトレンドから見る産業の変化
令和元年から令和5年までの5年間を見ると、総移入量は約100万トン前後で安定していますが、内訳には興味深い変化があります。
石油製品(揮発油+その他石油)は令和元年の約45.1万トンから令和5年の約42.0万トンへと微減していますが、これはエネルギー効率の向上や電気自動車の普及などが背景にあるかもしれません。一方、砂利・砂は令和元年の約19.8万トンから令和5年の約24.7万トンへと増加しており、建設需要の高まりを示しています。
データが語る佐世保の未来
港湾貨物のデータは、佐世保の産業構造を映し出す鏡です。エネルギー、建設、農業、水産業——これらすべてが港を通じて結びつき、佐世保の経済を支えています。
今後、カーボンニュートラルの流れの中で石油製品の移入量がどう変化するのか、建設需要は継続するのか、農業・水産業の物流はどう発展するのか。次回の統計書では、こうした変化がデータに表れてくるでしょう。港湾貨物という「見えない数字」が、佐世保の未来を予測する重要な指標なのです。
データ出典:令和6年版佐世保市統計書(第35回)「07_運輸 A_海上運輸 03_佐世保港移入貨物推移(年別)」
資料:港湾部みなと整備課